さっそく、音楽データとして記録された植物の電位変化に基づく作曲プログラムをMAXというコンピュータ言語で作成し、電位変化からメロディをみいだす作業が始まりました。そのとき、音律という存在がメロディをみいだすために重要な役割を担うであろうと思ったのですが、このことは、ルー・ハリソンの音楽からの教えでした。つまり、ピタゴラス音律や純正調、さらには、ウェル・テンペラメントのような不等分音律では、音階を構成する音程が微妙に異なり、また、純正音程の存在によって響きに独特な色合いが生じます。このような音程の微妙な偏差や協和性がメロディをみいだすうえで大きな活力となるように思えたのです。
植物の電位変化のデータを再生しながら、作曲プログラムにさまざまの値を与え、注意深く調律されたシンセサイザーからの音響結果を何度も辛抱づよく聴き、自分自身の耳をたよりにメロディをみいだしていく。そして、みいだされたメロディを集めて、それらを即興的にレイアウトしながら、ひとつの小曲をつくり、さらに四曲のセットにして、ひとつの曲集とする。このような作曲の方法を三、四年間続け、曲集も12を数えるようになりました。このような作曲の過程で、ケルトの装飾美術にみられる文様をたえず意識しました。枝葉を原型とするような渦巻きや曲線が反復されながら重なり合い、表層的な世界が生み出されているケルトの文様のように、植物からみいだされたメロディが装飾的な音のかたちとなって絡み合うような音楽。「植物文様」というタイトルも、僕自身のケルト美術に対するオマージュをあらわしています。